【過去の記事】感動の場-点 2025/4~
まちの広報誌『広報くっちゃん』では、小川原脩作品の紹介ページ「感動の場 - 点」を連載しています。

2025年4月
『無題』
1971年 小川原 脩 画
明るい空色に、ごく淡い緑色が広がる大地。土の色も少し見えて、白一色の雪の季節から色彩の季節へと移り変わった、爽やかな空気感が漂います。はるか地平線上には煙突のある家屋が見え、その屋根の残雪を見ると、まだまだ春本番は遠いよう。
その中央に大きく白鳥が描かれています。小川原脩は、馬・犬・大白鳥といった動物たちの姿を通じて、群れや孤独といった人間社会を投影したテーマで作品を多く発表しています。そのような中で、本作のように、愛嬌があり、ユニークな姿を見せる個々の犬や白鳥も描いているのです。集団化する社会に対して、多様な個々の姿に温かな眼差しを向けていた小川原の人間性が浮かび上がります。
白鳥といえば、湖面をすいすいと進む優雅な姿を思い浮かべるでしょう。
ところが、小川原脩が描いたこの白鳥は、足を蹴り出したような動きをして、愉快に踊っているみたいです。春の陽気を目いっぱい受けて、新生活の第一歩が軽やかな足取りでありますように。(文:E.N)
『無題』
1971年 小川原 脩 画
明るい空色に、ごく淡い緑色が広がる大地。土の色も少し見えて、白一色の雪の季節から色彩の季節へと移り変わった、爽やかな空気感が漂います。はるか地平線上には煙突のある家屋が見え、その屋根の残雪を見ると、まだまだ春本番は遠いよう。
その中央に大きく白鳥が描かれています。小川原脩は、馬・犬・大白鳥といった動物たちの姿を通じて、群れや孤独といった人間社会を投影したテーマで作品を多く発表しています。そのような中で、本作のように、愛嬌があり、ユニークな姿を見せる個々の犬や白鳥も描いているのです。集団化する社会に対して、多様な個々の姿に温かな眼差しを向けていた小川原の人間性が浮かび上がります。
白鳥といえば、湖面をすいすいと進む優雅な姿を思い浮かべるでしょう。
ところが、小川原脩が描いたこの白鳥は、足を蹴り出したような動きをして、愉快に踊っているみたいです。春の陽気を目いっぱい受けて、新生活の第一歩が軽やかな足取りでありますように。(文:E.N)

2025年5月
『壺と鴉と家』
1989年 小川原 脩 画
画面の奥には白壁の民家があり、手前の地面には赤みのある球体と鴉が描かれています。明るく調和のとれた色調からは静かに広がる時空を感じる作品です。
大きく描かれた球体は、小川原脩が1986(昭和61)年から1987(昭和62)年の年末年始にインドを旅したとき、ガンジスの上流にあるヒンドゥー教の聖地リシケシ、ハリドワールで見た壺です。
聖なるガンジスの水をくむために使われている素焼きの物で、街の屋台店に並んでいたそうです。小川原はこの形態の持つ不思議な魅力に惹かれたと画集に記載しています。帰国後はこの壺をモチーフにした作品を数多く作りました。
完全な球体に近い壺を「まる」、やや右下がりに見える家屋を「四角」、輪郭がシャープに描かれた鴉を「三角」の形に置き換えてみると、単純素朴な形態をした個々のモチーフを使ってひとつの画面を構成していることがわかります。「庭先のこの組み合わせが気に入った」という小川原がこの絵で表現したかった空気や気分を、見る側に読みとってほしいと語りかけてくる作品です。(I.K)
『壺と鴉と家』
1989年 小川原 脩 画
画面の奥には白壁の民家があり、手前の地面には赤みのある球体と鴉が描かれています。明るく調和のとれた色調からは静かに広がる時空を感じる作品です。
大きく描かれた球体は、小川原脩が1986(昭和61)年から1987(昭和62)年の年末年始にインドを旅したとき、ガンジスの上流にあるヒンドゥー教の聖地リシケシ、ハリドワールで見た壺です。
聖なるガンジスの水をくむために使われている素焼きの物で、街の屋台店に並んでいたそうです。小川原はこの形態の持つ不思議な魅力に惹かれたと画集に記載しています。帰国後はこの壺をモチーフにした作品を数多く作りました。
完全な球体に近い壺を「まる」、やや右下がりに見える家屋を「四角」、輪郭がシャープに描かれた鴉を「三角」の形に置き換えてみると、単純素朴な形態をした個々のモチーフを使ってひとつの画面を構成していることがわかります。「庭先のこの組み合わせが気に入った」という小川原がこの絵で表現したかった空気や気分を、見る側に読みとってほしいと語りかけてくる作品です。(I.K)

2025年6月
『游』
1992年 小川原 脩 画
四季折々、美術館の庭にはたくさんの鳥が訪れます。25年かけて大きく成長した木々や青々とした芝生は、鳥たちにとって居心地が良いようです。春になるとハクセキレイの子育てが始まり、渡り鳥の群れもやって来てにぎやかさも増してきます。夏に向かって、今度はどんな鳥たちが美術館の庭に姿を見せるでしょうか。
この作品には、温かみを感じる暖色の空間に、ふんわりとしたタッチで白い木と数羽の鳥が描かれています。幹の周辺を飛び回るもの、気ままに止まるもの、自由に振る舞う小鳥たち。顔こそありませんが、優しく見守っているような表情を感じさせる木の存在。お互いに信頼し、思いやっている関係すら想像できます。
題名の「游」という字には、およぐ、うかぶ、あそぶ・・・などの意味があり、木と小鳥の優しい印象にしっくりときます。小川原脩の遺した草稿に「〈游〉について」というものがあります。それは、小川原の支援活動していた「作品を考える会」からの励まし、そして北海道開発功労賞受賞に対しての感謝がつづられていて、作品のことは触れずに記述は途中までとなっています。游は、感謝の思いを託していた作品なのかもしれません。(E.N)
『游』
1992年 小川原 脩 画
四季折々、美術館の庭にはたくさんの鳥が訪れます。25年かけて大きく成長した木々や青々とした芝生は、鳥たちにとって居心地が良いようです。春になるとハクセキレイの子育てが始まり、渡り鳥の群れもやって来てにぎやかさも増してきます。夏に向かって、今度はどんな鳥たちが美術館の庭に姿を見せるでしょうか。
この作品には、温かみを感じる暖色の空間に、ふんわりとしたタッチで白い木と数羽の鳥が描かれています。幹の周辺を飛び回るもの、気ままに止まるもの、自由に振る舞う小鳥たち。顔こそありませんが、優しく見守っているような表情を感じさせる木の存在。お互いに信頼し、思いやっている関係すら想像できます。
題名の「游」という字には、およぐ、うかぶ、あそぶ・・・などの意味があり、木と小鳥の優しい印象にしっくりときます。小川原脩の遺した草稿に「〈游〉について」というものがあります。それは、小川原の支援活動していた「作品を考える会」からの励まし、そして北海道開発功労賞受賞に対しての感謝がつづられていて、作品のことは触れずに記述は途中までとなっています。游は、感謝の思いを託していた作品なのかもしれません。(E.N)

2025年7月
『裸婦と犬』
1992年 小川原 脩 画
明るく青い空にぽっかり浮かぶ雲。空の下には横たわる裸婦と口をあんぐり開けた犬が描かれています。この作品は1972年に東京日本橋柳屋画廊と札幌時計台文化会館での個展に出品された「裸婦と犬」の連作のうちの1点です。
地面に横たわる裸婦の身体は連なる山のようにおおらかで、犬との大胆な組み合わせでありながらも雲と地面が同じ色調で表現されているため、自然な背景として捉えることができます。画面をよく見ると、犬の足の周辺や裸婦の身体にうっすらと下描きの線が残っています。小川原が最初に描こうとした犬なのでしょうか。制作する過程で構図を考えながら完成に至った経緯を読み取ることができます。
北海道の爽やかな夏を感じさせる情景ですが、犬の口からはダラリと赤い舌が出ています。気象庁のデータではこの作品が描かれた1972(昭和47)年に比べると、昨年7月の倶知安の平均気温は1.5度も上昇しています。夏日が増えた近年「こう暑くてはたまらない!」と言いたそうな表情にも見えてきます。(I.K)
『裸婦と犬』
1992年 小川原 脩 画
明るく青い空にぽっかり浮かぶ雲。空の下には横たわる裸婦と口をあんぐり開けた犬が描かれています。この作品は1972年に東京日本橋柳屋画廊と札幌時計台文化会館での個展に出品された「裸婦と犬」の連作のうちの1点です。
地面に横たわる裸婦の身体は連なる山のようにおおらかで、犬との大胆な組み合わせでありながらも雲と地面が同じ色調で表現されているため、自然な背景として捉えることができます。画面をよく見ると、犬の足の周辺や裸婦の身体にうっすらと下描きの線が残っています。小川原が最初に描こうとした犬なのでしょうか。制作する過程で構図を考えながら完成に至った経緯を読み取ることができます。
北海道の爽やかな夏を感じさせる情景ですが、犬の口からはダラリと赤い舌が出ています。気象庁のデータではこの作品が描かれた1972(昭和47)年に比べると、昨年7月の倶知安の平均気温は1.5度も上昇しています。夏日が増えた近年「こう暑くてはたまらない!」と言いたそうな表情にも見えてきます。(I.K)
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