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【過去の記事】感動の場-点 2021/4~2022/3

蝦夷残侠伝 さし絵

蝦夷残侠伝 さし絵

2021年5月
『蝦夷残侠伝 さし絵』
(連載第3回目、月刊ダン2巻8号掲載より)
 1974年 小川原 脩 画
 
 『蝦夷残侠伝』は、1974~75年にかけ雑誌「月刊ダン」(北海道新聞社)に連載された倉島齊(1932-2011)の時代小説で、小川原脩はこの連載小説のさし絵を手掛けました。その数36点。小川原の作品では珍しい水墨画風、そして力強い人物描写が目を引きます。小川原にこの仕事を依頼した編集長の竹岡和田男氏は、「デッサンが十分だから動きがいい。墨の濃淡が空間で効いてムードを盛る。そして実在の人物を正面から描いたときの強く深い表現力」と絶賛しています。
 では「さし絵」を見てみましょう。主人公の与惣次が得意の鎖術で、非道な行いをする侍たちに対峙する場面。手前下部に屋敷の庭が墨色濃く表現される一方、画面上部に登場人物が争う様子を描いています。明暗で分けた一枚の絵の中で、闇夜の立ち回り、与惣次が繰り出す鎖の強烈な一撃、その臨場感が強調されているのです。竹岡氏の賛辞にも納得の、さし絵の面白さを見ることができます。

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2021年4月
『農民達』 1942年 小川原 脩 画
 
 この春、東京・板橋区立美術館で「さまよえる絵筆―東京・京都 戦時下の前衛画家たち」(3/27~5/23)が開催され、小川原脩作品が展示されています。
 日本の前衛画壇が最盛期を迎えていた1930年代後半、日独伊防共協定の締結、太平洋戦争開戦などをきっかけにイタリアのルネサンス絵画や日本の仏像、庭園などが多く紹介され、シュルレアリスム(超現実主義)やアブストラクト(抽象芸術)といった前衛絵画とは対照的な古典の影響を受けた作品が盛んに発表されます。そのために戦時下の日本の前衛絵画は弾圧されたと見なされていますが、一方で西洋や東洋・日本の伝統的な技法や題材に立ち戻ることで新たな表現を模索していたことが分かり、この展覧会ではその時代を生きた画家たちに焦点を当てているのです。
 この当館所蔵の本作は出品されていませんが、展覧会図録に参考図版として掲載されました。小川原もまた、イタリアルネサンスの画家・ピサネロを思わせる馬を中心に据えながらも、故郷の農民達を群像として描き、時代の空気感を反映していたのです。