感動の場-点

まちの広報誌『広報くっちゃん』では、小川原脩作品の紹介ページ「感動の場 - 点」を連載しています。
忿怒学的散歩

忿怒学的散歩

2018年12月
『忿怒学的散歩』  1986年  小川原 脩 画

 
 「忿怒学」は、小川原脩がつくった造語である。忿怒とは、大いに怒ること。忿怒の形相といえば不動明王などの神仏にも見られるもので、人々を襲う悪をその恐ろしい風貌で追い払うほかに、畏怖をもって、教えに耳を貸さない衆生たちを導く顔である。これを学問するということらしい。
この作品の主役はやはり、黒茶の肌に三つ目を見開き、頭に5つの髑髏(どくろ)を載せて、口を大きく開いた、顔。子どもたちから、獅子舞の「ししがしら」という声があがった。本来はチベット仏教寺院の祭祀で僧侶が被る神仏を模した仮面で、舞踏によって悪霊との闘いの物語が紡がれる。ししがしらとチベットの仮面に「神聖なもの」「厄よけ」といった共通点を、感じ取っているようだった。
 小川原は1983年、いにしえのチベット文化が色濃く残る地・ラダックを訪れた。3 年の時を経て題材となったこの仮面は、衣をなびかせ、ふわふわと宙を浮いて動き回り、ちっとも怒っているように見えない。子犬たちと街を行く姿には、ユーモアを効かせた「忿怒学的散歩」が一番しっくりくるように思う。